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提案は思い付きで 4

Auteur: 花室 芽苳
last update Dernière mise à jour: 2025-08-12 16:04:28

 しかも、それが迷惑料とどう関係があるのか分からない。だからといって余計な事を言うと、この男からとんでもない返答がくるような気がして止めておいた。

 それも無意味な事だったという事に、数分もせずに気付かされたのだけど。

「近いうちに、アンタと俺はある契約をすることになるだろう。それで、今回の迷惑料はチャラにしてやる」

「……契約って? そんなの内容を聞かなければ、私に出来るかなんて分からないんですけど」

 少し考えた様子を見せた後、神楽《かぐら》 朝陽《あさひ》はそう提案してきたけれど。その契約内容については一切説明がない。

 迷惑料がチャラになるのは有難いけれど、受けるかどうかはその中身にもよると思うのだが。

「こちらで契約書は用意しておく、契約内容についてはその日に話せばいいだろう。丁度良い時期に、人材が見つかったんだし? その時になってやりたくないと逃げだされても困るしな」

「……その話を受けない。もしくは契約拒否という選択肢は、私には無いんですかね?」

 私が逃げ出すような内容なら、きっと碌でもない契約に違いない。ギリギリに話してそのまま契約させてしまおうという魂胆なのか……

 どうせなら「意外とセコイ手を使うんですね」とハッキリ言ってやりたいのだが。

「拒否、ねえ? 俺と神楽グループに支払う迷惑料、アンタがすぐに払えるというのなら話は別だが」

 いつの間にか神楽グループの迷惑料まで付け加えられていて、ぐうの音も出ない。綺麗な顔をしているのに、本当に嫌な男なんだと思い知らされるばかりだ。

「分かりました。じゃあ私は、貴方からの連絡を大人しく待っていればいいんですか?」

「……ああ、どうせすぐに連絡することになるだろうからな。それまで良い子で待ってろ」

 私はご褒美を待つ子供じゃないんですけれどね?

 しかも待ってなきゃいけないのが、嬉しい事ですらないのに。そう言いたいのを我慢して神楽 朝陽を見つめれば、彼は満足そうに片方の口角を上げる。

 そんな風に男の色気を無駄に振りまくのは止めて欲しい。

 こんなドSな性格でなければ、私もこの男に興味くらいは持ったかもしれない。今の本音はコイツとはこれ以上は関わりたくない、になってしまってるけれど。

「連絡先と……おい、アンタの名前は?」

「雨宮《あまみや》、雨宮 鈴凪《すずな》です。連絡先は080-××……ああ、メモを渡しておきますね」

「いや、いい。もう憶えた、俺の番号も登録しておけよ? ただし、他の奴に教えたりしたらタダじゃ済まさないからな」

 ポケットに入れておいたスマホが鳴って、ディスプレイを確認すると知らない番号。どうやらこれが神楽 朝陽のプライベートな連絡先らしい。

 彼を狙っている女性からすれば欲しくて堪らないものかもしれないが、この番号からの電話など私には悪魔からの着信にしか感じない。

 流石にそこまでは言う勇気はなくて黙っていたが。

 そのまま神楽 朝陽から用件は終わったとばかりに部屋から追い出され、重役専用のエレベーターで一階まで降ろされたのだった。

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